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日本語教師、プログラマーになる。

韓国に嫁いで日本語を教えていましたが、なんやかんやでiOSアプリ作ってます。

韓国現地採用からの〜リストラの思い出

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こんにちは。先日会社が潰れることになり、来月から無職のらばんじんです。

さて以前、「こうなったのは初めてじゃない」って話をしたんですけどね。

 

lavandin.hateblo.jp

 

そうなんですよ。

実は私、一度別の会社からリストラされてるんですね。

 

それで、再就職して、ほっと一安心ってとこだったんですよね。ドイヒーだよね。

今の会社については現在進行中の事案なので詳しくは言えないですけど、まぁ人生色々、会社も色々ですからね(小泉)、前の会社についてはもう終わった事だし、記憶が薄れかけてる意味もあって書いときますね。

 

海外就職!現地採用!っていうと意識高いキラキラブログが多いけど、こういうパティーンももちろんありますよって事で。

 

そもそもこの会社に入ったのは本当に偶然、たまたま!「日本語ができるiOS開発者を募集」って求人を見つけて、これだ!!って連絡してみたんです。

 

その時私はJavaAndroidの講座を修了したばかりで、しかもAndroidは求人少ねぇから!!ってことで名前の割にWeb開発(つまりJSP、Springあたり)が中心だったし、そもそもAndroidじゃなくてiOSだしで、まあ無理だろうと思って面接でも「それできません。無理です。やったことありません。知りません」を連発してたんですけど、なぜか採用。

 

「できない事は正直に言え」って言ってくれた養成講座の先生、ありがとう!

なんですけど、裏を返せばそれはその会社の技量がそれなりって事でもあった。(ただ、正直に言うのは今でも大切だと思ってます。どうせバレるんで。)

 

入ってみると社員はみんな親切で、仕事は難しいし忙しいけど楽しいなって思えるようになってきていた。日本のこともいろいろ聞いてくれたし。

 

そんなある日、

 

日本事業がヤバイ

 

という話が出てきた。

このまま収益があがらないようなら、完全撤退するかもしれないと。

 

元々私は日本事業のために日本語ネイティブがいた方がいいということで採用された。だから日本語関連の業務についてはとても助かっているけど、正直開発要員としてはイラネなので、もしそうなったら、一緒に出て行ってもらうんでヨロシク。ということだ。

 

それが嫌だったら、残業するなりして役員にアピールしてみたら?という感じだった。

 

はぁ。わかりました。頑張ります!

ということでその場を後にしたけれど、この頃から私の「がんばろう!」という気持ちは急速にしぼんでいった。

 

何しろ、私はその時すでに20代後半。キラキラフレッシュネスな新卒ではなく、魑魅魍魎はびこる日本語教育業界からの転職組なのである。

私の「こりわヤバイセンサー」がビンビンに反応していた。元教師だけに。

 

その当時どっちが先か忘れたが、ワークショップと題しての合宿が執り行われた(韓国の会社ではよくあるみたい)。行き先はなぜか高級リゾート。役員は、「これくらいの規模の会社で、こんな豪華なワークショップをやるところはそうそうありません」と自慢げだった。

 

うーん。

 

その頃私は、退屈な演説を聞きながら、ボンヤリと学生時代の授業でのひとコマを思い出していた。(ちなみにせっかくそんなセレブリティな場所に来たのに、豪華なのは景色くらいで、部屋は狭いしずっと発表ばかりで、費用対効果が月とスッポン美女と野獣だった)

 

起業についての授業で、何か斬新なビジネスを考えてレポートにまとめてこい。という授業だった。当時ひとりカラオケにハマっていたが、毎回一人で入店するのが恥ずかしかった私は、「お一人様カラオケボックス」を考えて、収益は主に飲み物で回収するとか、楽器を貸し出すとか、なんか色々書いて提出した。

 

幸い、先生の目にとまったようで、なかなか面白いと褒めていただいた。一応自分でもかなり調べたのだが、当時の日本では一人用のカラオケボックスというのはなかった(今はあるみたいですね)。

 

「この一人用の利用に特化したカラオケ店というのは、他にはないのかな?」

「はいっ、私の調べた限りではありません(ドヤァ)」

「でもさ、他にないって言うのは、理由があってあえてやらないって場合もあるんだよね」

「(あっ察し)」

 

ちなみにこの先生、稼業がイヤでイヤで、気がついたら大学で教鞭をとっていたという変わり者で、実は日本人ならたぶん誰でも知っている某大手企業の御曹司である。

たまに会議で授業に遅れてくることがあったのはカッコよかったと思いました。

 

さてそんなこんなで、しばらくして案の定ビンビンポイントが出現した。

 

「この子、プログラミングやった事ないんやけど開発チームに入れたって〜」

 

?????

 

やってきたのは、大学卒業したてのプリプリフレッシュネスな朝鮮族の男の子だった。

韓国の男子は兵役があるので、新卒でも24を超えているのだが、中国国籍をもつ朝鮮族の男子は日本人と同様22歳のピチピチガイである。

 

そう、中国市場を見据え、中国語人材を投入してきたのである。しかもコネで。

 

日本市場から撤退って言ったそばから中国進出??????

 

しかもプログラミングは完全に初心者。

一応日本については顧客が残ってはいたので、完全撤退とはならなかったのだが、海外進出の難しさは身にしみてわかっているはず。

 

私を入れた時もこんな感じだったのだろうか。ちなみに、その子は会社のカネでswift初心者講座に通ってた。ズルーイ!

 

しかも中国への販路があるわけでもなし、現時点では特に中国語が必要なわけでもない。完全にポテンシャル採用。いくらコネとはいえ、営業社員に中国語やらせる方が安く済むのではないだろうか?

 

おまけのこのチャイナ君(仮名)、朝鮮族とはいえ心は完全に中国の若者そのものなので、ランチには来ないわ定時上がりだわ、仕事中寝てるわ上司はブチ切れるわで、結構場の空気を乱してくれちゃってた。

(内心で拍手を送っていたのは内緒です)

 

最初の方こそ白眼視されていたチャイナ君だが、理系なだけにプログラミングの方には適性があったようで、仕事の方は特に問題がなく、天然弟キャラで次第にムードメーカーっぽい雰囲気まで醸し出しつつあった。すげえぞチャイナ君。

 

そんな社内にも、無慈悲な破壊の足音は近づいてくる。

 

給料遅配である。

 

その日、いつものように経理担当が各部屋(※レンタルオフィスを数部屋借りていた)を回って給与明細を配っていた。その時の部屋割りは、私、チャイナ君、デザイナーさんという構成であった。

 

私とチャイナ君は何事もなく無事に明細を受け取ったが、デザイナーさんの分はなかった。デザイナーさんは私たち平社員とは違い、「仙人」じゃなかった「選任」と呼ばれている。

 

ここで韓国の一般的なIT企業の職級制度を紹介しよう。(漢字はもしかしたら間違っているかもしれない)

 

ヒラ社員-研究員

代理に相当-主任研究員

課長に相当-選任研究員(この辺から「チーム長」が選ばれだす)

?-責任研究員

?-首席研究員

役員

 

うちには責任&首席研究員にあたる営業・経理社員がいなかったので、彼らが何に当たるのかはちょっとよくわからない。まぁ次長?あたりだろうか。(※会社によって違います。)

「代理」というのは韓国ドラマが好きな方ならきっとご存知だろう。平社員というのもアレなので、まぁ昇進させとくか、程度の地位である。「課長代理」とか「支店長代理」とか具体的に何をどう代理しているのかを明かさず、単なる「代理」なのがミソだ。日本語は曖昧な言語で、韓国語はハッキリしているなんて絵空事だというのがよくわかる例である。日本でいうと何だろう。主任研究員と同じ地位らしいから、やっぱ主任?

ちなみにただのIT土方なのにオボちゃんとこみたいな大げさな肩書きがついているが、これはサムソン電子での呼び方に倣ったものだそうだ。

 

さてその選任研究員にあたるデザイナーさんだが、私よりちょっと年上なくらいでまだ若い(若いのに選任扱いなところが中小企業たる所以である)。しかも独身で結構可愛い。ちょっと過激な愛猫家(彼女によれば「ウリナラ」は動物愛護後進国なのだそうだ)で結婚には興味がないようだが、それはともかく彼女は明細をもらえなかった。

 

デ「なんでよ!?」

経「はぁ…。なんか…。今月は一週間だけ遅れます」

デ「いやだからなんでよ!?」

 

なんとも昭和っぽい響きだがこれこそ「耳がダンボ」というやつであろう。どうやら彼女も初耳らしい。

 

百歩譲って遅れるのはわかった。しかし、それを当日教えるってどうなんだ。韓国はカード社会であるし、彼女は買い物マニアでもある。支払いとかどうすんの。

 

なんとか彼女の追及を逃れ脱出に成功した経理さんだが、その後しばらくして私の直属の上司にあたるチーム長(「責任」研究員である)が飛び込んできた。

 

二人とも早口で話していたので正直あんまり聞き取れなかったが、どうせ給料が遅れたときに口をついて出てくる言葉なんてたかが知れているし、そもそも聞き取れたところで恐ろしいだけなのでリスニングを放棄した。

 

一通り喋り捲って満足したのか、チーム長は私に一言「まぁ、そういうことです」と言った。はぁ。どうやら「選任」級までは遅配組であるというのが結論らしかった。ちなみに、我々ヒラ研究員には最後まで説明も謝罪もなかった。もうこの頃には私のセンサーはビンビンすぎて萎えていた。

 

後日、果たしてデザイナーさんの給料は無事振り込まれた。デザイナーさんは嬉々として新しく購入した猫グッズの自慢をし、日本の楽天で見つけた猫用のお散歩リードを購入する方法がないかと私に相談してきた。猫の散歩の是非について、ああでもないこうでもないと議論した。そう、日常が戻ってきたのだ。そんな気がしたんだ。

 

もちろん気のせいでした。

翌月、やっぱり給料は遅れた。

 

今回は「選任」級のひとつ下、「主任」級までが対象である。当時残っていた「主任」は別室のウェブ担当者だけだったので、彼の心情を窺い知ることはできなかった。彼は私が考えうる限りの「典型的な韓国人」というものを体現している男性だった。黒縁のメガネ、夜神月のような髪型、骨ばった長身、そして豚バラ焼肉の焼き方。そんな善良な韓国人にも遅配の魔の手は及んだのである。

 

新條まゆの絵のようにドアを鳴らしてチーム長が飛び込んできた。最近彼が持ってくるのは嫌な知らせばかりである。「今回ばかりはちょっと本当にヤバイ」。要約するとそういう事だった。

 

私とチャイナ君は人材バンクに登録させられた。「仕事がないのでどうにかとってこよう」という趣旨だった。「他言無用で」。そうは言われても、この社内を漂う空気全体が全身でそう言っている。おそらくカナリアがいたら死んでいるだろう。言われるままに項目を埋めたが、見事にスッカスカである。ちなみにどうでもいい情報だが、ロシア語でおとぎ話の事をスカースカと言う。

 

今回も一週間ほど遅れたが、無事に振り込まれはした。ただチーム長の給料は額が足りなかった。

 

ついにXデーはやってきた。奇しくも私はあの時と同じ会議室へ通された。日本事業がヤバイことになっていると聞かされた、「チャグンフェイシル」と呼ばれる独房のように狭い会議室である。

 

私と上司は切られる事になった。他の何人かと共に。主任も含まれていた。

小さい会社だから、かなりの大手術である。ブラックジャックなら「南無三!患者の体力が足りない」と言うところだ。しかし、会社は人体ではない。これだけの人件費を節約できれば、立て直せるだろうという判断だった。確かに人体を切断してポカリスエットのゼリーにでもぶち込んでおけば、いくらかは持つだろう。そう、多重人格探偵サイコならね。

 

「一応、理事にはまだ言ってないってことにしてありますから」上司は言った。「呼び出されたら、ビックリした振りをして下さいね」はぁ。これ以上茶番を続けろというのか。ゲンナリである。

 

その日の午後だったか、理事から呼び出された。普段厳格で、全員から狂いのない時計のように忌み嫌われていた理事は言いづらそうにこう言った。「会社を維持できなくなった。できる限りのことをする」

ちょっと動揺した。あの理事がこんなにしおらしいことを言うとは。

 

後日、理事が私を心配していたと聞かされた。ショックを受けたように見えたのだろう。 実のところ理事の意外な一面を見てしまったのが原因だったのだが。後日、彼も会社を去った。ざまあみろバーカ(※彼は飲み会の度に私にしつこく韓国名を作れと言っていた)。

 

幸いにもその後すぐに次の仕事は見つかり、しばらく働いたがなんやかんやで潰れることになった。元の会社は今でもやる気、元気、井脇である。ガハハ。